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鳥のさえずりと目覚まし時計の電子音。
条件反射で時計を叩いて、ゼルは重い瞼を開けた。
見なれたガーデンの自室。

「…あ…?」

頭がはっきりして来て、慌てて起き上がる。
大丈夫、ウェディングドレスなど着ていない。

「…なんだ…やっぱ、夢かよ…」

それにしても妙な夢だったと、隣でまだ眠るサイファーを見つめた。

「………」

男同士で結婚…そんなことが出来る訳は無い。
家族や周囲……世間といったモノが許すはずがない。

それでも…自分はサイファーと一緒に居たいと…
夢の中までも居たいと願っているのか。
苦笑しつつもふと思い出す。

「……カッコ良かったな…」

夢の中で素直に思ったコトが口に出る。
時計を見ると、自分が起きなければならない時刻。

サイファーを起こさぬ様に、そっとベッドを出る。
何も着ていないコトに気付き、少し顔が赤くなるがそのままバスルームに向かった。


サイファーはそっと目を開けた。
ゼルがバスルームに消えたのを見届け、半身を起こすと煙草を咥え…火をつけた。
大きく吸い込んでから、また吐きだし…立ち上る紫煙を見つめて呟く。

「…一体、なんの夢…見てやがったんだ?」

明け方近く、サイファーが目を覚ましたのは・・・ゼルの小さな声の所為。

『サイ…ファ…』

ああ?と返事しながらゼルを見ると、何かに怯えるような表情をしていたので
…苦笑しながらも抱き締め、唇・額・頬に何度か唇を触れた。

すぐに寝顔は穏やかになり、耳に心地良い寝息のリズムが聞こえてくる。

「…ったく、手の掛かるチキンだぜ」

憎まれ口を叩きながら、目は自然とバスルームのドアを見つめる。


妙な夢を見た。
けれど何処か幸せで…

夢の中でもサイファーと一緒だった。
自分を見つめて、周囲の目からも守ってくれた。

でもきっと…この夢の話は、誰にもしないだろう。
からかわれるのもイヤだし…自分の心の中に隠しておきたい。

すぐに誓いを立てなかった自分に、少し罪悪感。
それを流してしまうように、熱いシャワーを浴びる。

今日からまた…任務で離れてしまうが…
サイファーを信じているから、寂しくは無い。

夢の中の…あの誓いも…信じているから……


アイツが何か夢を見た。
どんな夢かは言わなかったし、聞かないでやった。

けれど、バスルームから出て来たアイツは…
妙に嬉しそうで、恥ずかしそうで…
きっと、いい夢だったんだなと心の中で呟いた。

口ではアイツをからかいながら、目と頭の奥に…表情の全てを焼き付ける。

今日から一週間…アイツが居ない間も、時々アイツの夢を見るように…
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