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「さぁ…サイファー…花嫁を…渡しますよ」

「ありがとうございます。先生」

みつぐ様画(48KB)

聞きなれた低い声、短く切りそろえた金髪。
一見冷たく見える、碧の瞳。白い手袋を右手に持った長身の彼。

真っ白なタキシードが、似合い過ぎるくらいの…サイファー・アルマシー。
唖然としていたゼルは、何時の間にかサイファーの左腕に掴まっていた。

パイプオルガンが止み、静寂が訪れる教会の中。
神父が聖書を読み始める。

「……そして、汝…サイファー・アルマシー…富めるときも、貧しい時も。
病める時も…健やかなる時も…ゼル・ディンを愛すると…誓いますか?」

サイファーがゼルをチラッと見て、少し口元を上げ…短く言った。

「はい、誓います」

ゼルの胸に…なんとも言えない気持ちがこみ上げる。
嬉しくて楽しくて…でも何処か怖くなるような…

今度はゼルに神父の問いが向けられる。

「…汝、ゼル・ディン…富める時も、貧しき時も。
病める時も、健やかなる時も…サイファー・アルマシーを愛すると誓いますか?」

ゼルは黙っていた。
どうしたらいいのか、分からない。

沈黙が長くなると、周囲がざわめき出した。
まるで、ゼルを咎めるように。

神父を見つめると、怒ったような顔で睨んでいる。
急に視界が滲んで…ゼルは唇を噛んだ。

「……ゼル…ヤだったら…言わなくてもいいぜ?」

不意にサイファーの声。ゼルにだけ聞こえるくらいの…彼の声。
誘われるように右を向くと、サイファーの穏やかな瞳に会った。

「サイ…ファ…」

ふわっとヴェールが上げられ、サイファーがじっと自分を見つめていた。
細められる碧色の瞳。長い指がそっと顎を持ち上げる。

端正な顔が斜めに近付いて来て…ゼルは目を閉じた。
少し冷たい、唇の感触。
その瞬間、ゼルの心からは嬉しさと切なさ…幸せ以外の感情は消えてゆく。

「……はい…誓います…」

唇が離れて…サイファーの手を握り締めたまま、そう呟いた。

「…では、ここに二人を………と認め…」
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