no title/さくら(page1/5)


「好きな奴いるのか」

って聞かれて黙って首を横に振った。
コイツがこんなハナシをフッてくるなんてまるで予想外で、俺はかなり驚いたけど。
サイファー。
あんたの次の台詞には、ひっくり返りそうになるほどたまげさせてもらった。

「じゃあ、オレを試せよ」
「・・・は?」
「オレは試験がスキなんだ」

何が「じゃあ」?!
新手の嫌がらせか?
馬鹿にすんのも大概にしろ。
いけ好かねえ野郎だ。
どこもかしこも俺よりデカい上、今までまともに名前を呼んでもらったことすら無い。
俺はいつもそうするように犬歯を剥いてくってかかった。

「わりーけどな、俺は試験なんかでぇっきれーなんだよ!んな笑えねえ冗談に付き合ってるヒマねえし!!」

てっきり胸倉でも捕まえられるかと身構えてた。
なのに。
サイファーはぐいと身を屈めて、俺との顔の距離をデコがくっつきそうになるほどに狭めて嬉しそうに言ったのだ。

「ならハナシが早え。真剣に、クソ真面目なオツキアイしようぜ?」

呆気に取られた。
ツッコむタイミング逃した。
んなサワヤカな笑顔は見たこと無くて、一瞬息が止まっちまったのだ。
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